記念樹になった植木

数年間、家事に専念していた私が再就職しようと入社試験を受けた帰り、あるデパートの前で無料の植木配布をしていた。花好きな人々が列をなして押し合いながら並んでいた。特に花や樹木に興味のある私ではなかったが、残った植木の苗をもらうことになった。

数本の枝だけの今にも折れそうな細い木。「ギョリュウバイ」という名前らしい。

その木を自宅に持って帰り、庭の隅の空スペースに植えた。育つかどうかもわからない本当に細い木だった。

小さな枝だけの木は、特にこれと言った世話もしないのに、雨に打たれも、嵐に枝を揺らしながらも、暑さにも寒さにも負けることなく、枝を一杯に広げた大きながっしりとした樹木になった。緑の葉を枝いっぱいにまとい、春と秋、黄色い小さな花を、まるでダイアモンドを散りばめたドレスの様に、その体中に付けて見る人の目を楽しませてくれる。この季節は、隣に植えている赤い紅カナメとの黄色と赤のコントラストがとても美しい時季である。

あれから8年の年月が流れたことを思う今、また社会に出て色々な経験をした自分がいる。嬉しい事もあったし、苦しい事もあった。世の中の理不尽を感じ、涙する事もあった。

あの日、もらった小さな木の成長と共に過ごしてきた私がいる。

ふとした巡り合わせでもらったこの木は、私の再出発の記念樹だったのだと思う。